一つ大きい川を渡ります。
その川には、
「ヌートリアが住んでいる」
と社会の先生にうかがっていたので、
私は毎日の行き帰り、
川を覗き込みながら橋を渡っていました。
完全に変人です。
周りの人は距離をとって通り過ぎます。
でも、
そのかいあって、
先日、こちらからあちらの岸へと
長い尻尾をゆ~らゆらつかいながら
泳いで渡るヌートリアを目撃しました。
一瞬、カピバラさん……?って大きさの
茶色い大きなネズミです。
中型犬くらいはあるんじゃないでしょうか。
「先生、見ましたよ! ヌートリア!」
と喜びの報告をすると、
私の隣に座っている体育の中年女性の先生が、
「え!? ヌートリアっていうの、あれ?」
と眉をあげます。
割とスネ夫のお母さんみたいな眼鏡をかけていらっしゃる
でも、とてもキュートで
スタイル抜群の先生なのですが、
「や~、な~んか、泳いでるなーって思ってたのよ!
バービーかなーって思うけど、
日本にバービーがいるとは思われへんし、
でも、バービーにそっくりで、
こんなとこバービー泳ぐんや!って
びっくりしててんよ~!」
講師室は微妙な空気に包まれましたが、
誰も何とも言えない表情です。
私の脳裏には、
金髪の手足の長い少女が、
あのよどんだ汚い川を向こう岸へと泳ぎ切った映像が
流れていたのは言うまでもありません。

あるいは、こちらのバービーさんか……
